2003年9月3日(水) 手術の話 |
さて、そろそろコマンドキーも押せるようになってきたので、思い出すのもイヤだけどちょっと楽しい手術についてお話ししましょうー。
8月25日月曜日 午前1時
さて、あれは土台もできて、「スペースワールド機動戦士ガンダムワールド用ジオラマ」(長)制作もやっと調子が出てきた頃でした。ちょっと無理な角度で調子よく発泡スチロールを削っていたときの事です。 ぎゃああー。発泡スチロールを接着していたパテが硬かったのがイカンかった。パテ部で力を入れすぎて、そのままサクリとスチロール部を削り切った巨大カッターが、勢い余ってグザーと左手まで貫通してしまったのです。 ひえー、どうも親指の付け根あたりが骨を中心に半分になってる!死ぬる。 (気絶) 「救急車レベルです」と謎の申告を残してふらふらと倒れそうになっていた私は、優しい皆に連れられて、近くの救急病院に連れて行かれたのです。 「このくらいの怪我でわーわー騒ぐもんじゃなかよー」 と言う看護婦のおばあちゃん。ねえ、俺は痛くて唸っていたのではないんよ、実際痛みはほとんど無かった。それよりも、せっかくこんな夢のように楽しい仕事を、ちょっとした不注意が原因で、おそらくもうやることが出来ない。悪くすればこの企画自体が無くなってしまうかもしれない。という悔しさで唸っておったんですよ。 「骨まで行ってますねー、白いモノが見えてます。腱が切れているかもしれないので、専門の先生を呼びましょう」 「指をよく使うお仕事ですか?」 「はい」 「うーん」 なんだか、深刻そうです。やがて専門医の先生がやってきて、見て貰ったところ、緊急手術となりました。なんか、カッコイイーとか、ちょっと思ったばい。緊急手術。ひゃー。
シャンプーハットみたいなのを被らされて、薄い手術着を着せられた私は、「やめろ〜、ショッカー」(ノリダーの方)て感じで例のあの手術台に寝かされて、やれ心電図だ点滴だとパイプだらけになりました。 「脇の方テイモウしますね」 「はい(テイモウて何?)」 あれよあれよという間に、昔のマッチみたいに左脇を剃られ、そこから麻酔の注射をするという不思議な光景にぼんやりとしつつ、やがて私と私の左手の間に、目隠しのカーテンがかかるにつれ、こ、これはコワイ、隠されたら余計にスゴクコワイ。いったい何が始まるの?という思いがズンズン大きくなっていくのでした。 ピ ピ ピ ピ ピ というあの有名な音をBGMに、先生と助手が、脇の下をチクチク刺しながら、 「左手がシビレたら教えてください」 「まだシビレませんか?」 「おかしいなあ、これならどうですか?」 「シビレているような気もします」 「いえ、シビレたら明らかに判る程シビレますので教えてください」 と、真面目にシビレシビレ言っているのが妙におかしく、あははははと笑っていると、左手が「ビビビビビ」と、松田聖子と変な歯医者が結婚した時の100倍くらいのシビレ(古い話ですみません)に襲われました。 「シビレました!」 「○○○(麻酔薬の名前と思う)200注入、んー、300一気に行こうか?」 「はい」 その時、ピ ピ ピ ピ ピと規則正しく動いていたアレが、 「ピーーーーー」 「だ、大丈夫ですか?!」 「だ、大丈夫ですよ?」 「おかしいな、この心電図おかしいですね」 この心電図はその後何度も俺を心停止状態にしてくれました。 まあ、助手の方が機械を何度もいじって、何度も心停止しているのに気を取られているうちに、麻酔も効いてきて、手術はズンズン進んでいきます。(助手の方が、ちゃんと手で脈を取ってくれていました) 「おかしいな」 「?」 「あれれ?」 「どうしたんですか?」 と左手の方を見たとたん、例の目隠しカーテンが、はらりと風に飛んで、なんだかモノスゴイものが目に入って本当に心停止してはタイヘンなので、右手の方を見たままおそるおそる聞いてみると、 「カッターで切ったんですよね?」 「はい」 「もしかして発泡スチロールとか切ってましたか?」 「はい」 「これ、腱じゃなくて、発泡スチロールのくずですね。洗浄したら消えてしまいました」 「えええ?」 「よかったですね」 「はい」 「手術室使うことなかったなー」 「わははは」 「発泡スチロールで何を造ってたんですか?」 「今度スペースワールドでガンダム展があるんですが、それに出展するジオラマを造ってたんです」 「おおお、いいですねー、私も小学校の頃ガンプラ造ってましたよー!」 「お、じゃ、30才くらいですか?」 「32です」 「あ、同い年じゃないですかー」 「私はガンダムよりもザブングルに出てきた、ブラッカリーとかブロッコリーとかいうあの」 「黒いザブングルですね、ブラッカリーです」 「そうそう、それそれ、それが好きでね、プラモデルが発売されなかったですよね、すごく残念でしたよー」 「あらー、えらくマニアックですねー」 「しかし、仕事でジオラマ造るなんてイイですねー」 「そうなんですよー、でもこの怪我のおかげでちょっともうツライですね」 「大丈夫ですよー、腱切れていないから、暫くしたら左手自体は不自由なりに使えますよ」 「ホントですか、よかったー」 とか助手の人と話してるうちに8針縫い終わり、オマケ雑誌ガレージの事やら話して、「んじゃ次号は絶対買いますよ!」とか言われながら、あれよあれよといううちに帰宅したのでございます。
結果的に手術室に入る程では無かったのですが、骨膜まで切れてたので、大事を取っててよかったらしいです。バッチリ縫ってもらったおかげで、こうして10日経たずに親指でコマンドとスペースが打てるようになりました。ありがとうございました。
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